ここで母を始とする、散一家の話を聞いてもらいたい。

前回、祖母姉妹に育てられたと書いたが、この2人の因縁じみた
半生から語らせてくれたまい。まず長くなりそうなので姉祖母から・・・。

祖母が死んだ時に、母が語った話しだ。

5人兄妹の末っこが私の母の母・・そしてそのすぐ上の姉。
仲が良かった訳ではなく、ただ3つ違いの年近い姉妹だったので
くっついて育ったらしい。
姉・ハルはひっこみじあんで耐え忍ぶタイプ。
妹・アキは自分の思い道理にいかないとキれるタイプ・・・。
恋愛もそうだったらしい。

ハルは一生を1人の人に捧げた。
ただし彼には正妻がおり、彼と彼の妻の提案により、
その屋敷の離れを彼女は住処にしていたそうだ。

そこまでして彼の側にいたかったのだろうか?

正妻の為に「一生彼の子は産まない」と約束していたらしい。
朝・夕小さな写真立ての中の空襲後の残る写真に私とハルは
「世界が平和であるように・・・。今日も一日私達を見守っていてください」
とお祈りしたものだ。

その時「これはおじいちゃん?」と一回だけ聞いた事がある。
ハルはやや頬を染めて「男らしくやさしい人だったよ」と小さく笑った。

私は彼女は幸せなお嬢様だと思っていたのだ。

主に動物や花の好きなこののんびりした祖母について私は育った。

母は芸者をし、4人の生活を叩き出していたが
回らずアキも働きに出ていたからだが・・・。

ハルとの生活は楽しかった。
よもぎを取りに行き、おもちを作って食べた。
つくし・セリ・・・
ハルは本当にそういうものに詳しかった。

そのかわり、非常に悲観的で何かあると家出をしたり、
しくしく泣くので傷つけずに接していかねばと子供心に思ったものだ。

ハルはまた非常にシャイではあったが市場ではヒロインだった。
いろんな人に声をかけられ話しをしていた。

世間話しだったり、誰かの悩み相談だったり・・・。
みたらしに釣られて荷物持ちによく行っていた私は家でずっと
家事等をこなし、母やアキに文句を言われて
小さくなっているハルが信じられなかった。
それ程生き生きとしていたのだ。

そして彼女は子供が好きだった。
一度アキは私の母・・・つまり自分の子を産む前に「あんたにやる!」
と言ってしまった事があり、母の戸籍も結構ややこしい。
結局、取り上げられた訳だけど・・・・。

彼女は私が自分の意志とそぐわないと死ぬんじゃないかと思う程嘆いた。
回りは「ヒロイズムに酔っているのだ」と言っていたが、そうじゃない。

彼女は私を通して産めなかった子供を見ていた。
それは彼女と愛する彼の子である意味理想の息子だったのだから・・・。

彼女は妹が没したまる1年後にこの世を去った。
眠るような安らかな死だった。

私はのんびりした中に愛人として一生を捧げた激しさを持った
この少女のような祖母が好きだった

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