本日の主役は私の実の祖母・アキだ。

彼女は非常にエキセントリックで情の濃い
女だった。

5人兄妹の末に生まれて上のお下がりで
生きて来た為「新品」と「ブランド」を
こよなく愛した。

たまに、子供の頃の1日の食事がさんま1匹を
3つに分けたモノだった事があるが、アキの
無駄使いのせいだったらしい。(笑)

アキは庄屋の旧家に見初められ嫁入りした。
昔の写真を見たが、ハル・アキ共に美しかった。
特にアキは小柄で色白、華やかな、はいからさん
であった。
そりゃあ見そめられるわねぇ・・・と言う感じ。

ただ、祖父は本物のボンボンだったのだろう。
この人の我の強さを見抜けなかったのだから・・。

そのボンボンは金持ちにありがちなうっかりを
やらかしてしまう。

「浮気」だ。

その頃はもうべたべたするアキの愛情と、愚痴で
当たり散らす感情の波に、ボンボンは疲れて
いたらしい。
よく家を空けるようになった。

アキはストレートにぶつけても、のらりくらりな
旦那にあいそをつかし、仕事に専念した。
お腹には私の母ナツがいたのだが・・・。

たまたまハルが遊びに来ていたかどうかは定かで
ないがアキがハルに持ちかけた。
「姉さん、私は旦那の子なんて育てたくないわ。
あんた子供欲しいんでしょ?やるわ」

耳を疑ったのはハルだ。
そりゃそうだ、彼の子は産めない(日記「白薔薇
の章」参照)でも子供は欲しい。
しかも妹の子なら血縁である。
ハルは2つ返事でオーケーし2人は譲渡状を作り
上げた。

しかし産み終えてみると不思議なもので、あれだけ
嫌いな子供が愛おしく見えて来るらしい。
一度は契約に基づき、ハルとの養子縁組を認めた
アキだが、乳の張る頃には泣いて泣いて子供を
奪い返した。
ハルも母乳で育てられない子供を哀れに思い、
泣く泣く返す事にした。

そんなおりに祖父は失態をやらかした。
こともあろうか浮気相手がアキにバレてしまった。

アキはそれまでのおかみさんの仮面を自ら壊し
包丁を構え、敵陣に乗り込んだ。
「この泥棒ネコが!」
2人は面くらって逃走してしまい、アキは
何日か投獄させられてしまった。

その後何ヶ月かたって「家名に泥を塗った」と
娘共々離縁されてしまった。

その後再婚した男とも上手く行かず、娘・ナツが
働くようになったら2人で働くようになり親子
べったりになっていった。
母が離婚した原因もアキが「気に入らなかった」
からなのだから。
またそれを認めた母も親べったりだった訳だが。

ここまで書いて読み返してみて「とんでもねぇ女」
とかお思いだろう。

ところがこれが、アキの凄い所で「嫌われない」
「憎めない」のだ。
癇癪持ちだが、情に熱い為、困っている人を
ほっとけない所が妙に可愛い女・・・。
アキは何かしてあげたくなる恐るべき魅力の
持ち主だった。
基本的に「末っ子体質」なのだろう。

そしてまた、告白すれば必ずゲット!
フェロモン王でもあったそうだ。
ただ必ず浮気をされていたのだから・・?
修羅場選手権があったら絶対一位に輝くだろう!

アキはハルより丸一年早くこの世を去った。
彼女にはよく殴られたが、目の中に入れても・・と
いうぐらい熱く可愛がってくれた。

アキは糖尿病を患い、片目を失い右半身の機能も
失った。
毎日インスリンを注射し義眼を洗うのは、中学から
20才までの私の仕事だった。
嫌だったがおしゃべりで活動的だったアキの方が
死にたい位嫌な事はよく解った。

自分のしゃべる言葉が上手く伝わらない・・・。
好きだった裁縫用具すら持てない・・・。

「迷惑かけるばっかだから死にたい」
何度も言われる。
1日に10回くらい。

上手く言えなくて
「大変だけど迷惑じゃないよー」としか言えない
だって本当だったの。
迷惑って思う訳ないじゃん。
「バカだなぁー」って笑いながら練習用スポンジと
かなり違うなぁと思いながら、注射を打ってた。

アキの右目は私が3才くらいの時、蹴っちゃって
結局糖尿のせいだけど、そこで喰らってなきゃ取る事なかったし・・。原因、私だしねぇ。

最後は辛かった。
病院で「頭が痛いよぅ」と泣きながら死んだ。

私は彼女の所でまったりしていた。
携帯なんざない時代だったが、妙にカンの良い
母から彼女の家に電話が掛かってきた。

私はアキから隔世遺伝という悪魔によって
置き土産をいただいている。
「糖尿病」
アキの最後が自分の最後とダブるのだ。
私はどうやら左のようだが・・・。

それでもあれほど恋の勝利者にも敗者にも
なった女は類を見ない。

正直に書いているけれど、私はアキが大好きだ。
けっこう反面教師っぽいけれど、私の心と体には
今もアキが住んでいる。

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